有識者によるお役立ちコラム
PROFILE
明治大学
情報コミュニケーション学部
後藤 晶専任准教授
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略歴
2010.04〜2015.03 明治大学 情報コミュニケーション研究科 博士後期課程修了 博士(情報コミュニケーション学)
2008.04〜2010.03 明治大学 情報コミュニケーション研究科 修士課程修了 修士(情報コミュニケーション学)
2004.04〜2008.03 中央大学 総合政策学部 卒業 学士(総合政策) -
現在の専門分野
行動経済学、社会情報学(キーワード:行動経済学、実験社会科学、計算社会科学、実験室実験、ナッジ、クラウドソーシング、オンライン実験)
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研究テーマ
ゲーム実験による自発的貢献行動の研究·行動経済学の社会実装に関する研究
VOL. 8
あなたは今週、何回外を歩きましたか
札幌市がこの春始めたアルカサルを、この4か月間でおよそ10万人の方が利用しました。自己申告ではなく、スマートフォンに記録された歩数をそのまま使っているので、ふだん何となく感じている「今日は歩きやすい日だな」「今週はあまり歩けなかったな」という感覚が、実際どれくらいのものなのかを確かめることができます。
今回は、2026年4月から7月の利用状況の速報をお伝えいたします。
なお、明らかに不自然な記録は、ランキングの不正防止と同じ基準であらかじめ除いてあります。今回は、このデータからわかったいくつかの発見を紹介します。
気温がよく効くのは、休日だけ
まず気温との関係です。平日と休日(土日・祝日)に分けて見ると、はっきりした違いがありました。平日は通勤や買い物など、天気に関係なくこなす用事が中心のためか、気温が変わってもあまり歩数は変わりません。一方、休日は気温にはっきり反応していて、最も歩きやすいのは19度前後、暑すぎても寒すぎても歩数は減っていきます。
図1 気温と歩数の関係(平日・休日別)
雨や風の影響もはっきり出ています。5ミリほどの小雨が降るだけでも、その日の歩数は100歩前後少なくなる計算になります。風が強い日も同じくらいの影響があり、逆によく晴れて日照時間が長い日は、1時間長く晴れるごとに40歩ほど多く歩く傾向が観察されました。
今回のデータで休日にあたるのはゴールデンウィークなどを含めて39日と限られています。また、4月から7月のデータであるので季節の影響や雪の影響などは観察できていません。また今後、改めてこの傾向がどう変わるかご報告したいと思います。
実は月曜日はやる気の日ではない
月曜日は「週の始まりだから頑張ろう」というやる気の日だとよく言われますが、データを見るとむしろ平日の中で歩数が少なめでした。月曜から金曜にかけては、5,813歩、5,998歩、5,993歩、6,061歩、6,132歩と、週の後半に向けてじわじわ歩数が増えていきます。ところが土曜日になると一転して5,550歩まで大きく落ち込み、日曜日はさらに5,253歩まで下がります。金曜と日曜の差は800歩以上です。週の中で少しずつ調子が上がっていき、週末に入った途端に一気に落ちる、という動きに見えます。金曜日に歩数が多くなる理由ははっきりしませんが、週末に向けて買い物や用事を済ませておく方が多いことや、金曜の夜に外食や外出の予定が入りやすいことが関係しているのかもしれません。
図2 曜日別の平均歩数
週末、特に日曜日に少し意識してみると、週全体の歩数が変わってくるかもしれません。天気が良い休日を選んで少し遠くまで出かけてみる、というのも一つの手です。
住んでいる場所によっても差がある
区ごとの平均歩数を地図にすると、区によって差がある傾向が観察されました。
図3 区によって平均歩数はどう違う?
一番歩数が多かったのは中央区で、一日あたり平均6,599歩でした。一番少なかった清田区は6,028歩で、その差はおよそ570歩です。豊平区や東区など都心に近い区で多めの傾向がある一方、南区や清田区など都心から離れた区はやや少なめでした。この差には、日常のちょっとした外出のしやすさ、たとえば商業施設や公共交通機関までの距離が関係しているのかもしれません。同じ「外に出る用事」でも、歩いて行ける範囲に用事が多いか少ないかで、積み重なる歩数が変わってくる、ということです。
下の地図は、65歳未満・65歳以上それぞれの中での多い・少ないを色分けしています。65歳を境に分けてみても、区ごとの傾向はおおむね変わりません。
図4 65歳未満・65歳以上で見た、区ごとの平均歩数(それぞれの年代の中での比較)
65歳未満・65歳以上のどちらの年代でも、中央区は歩数が多め、清田区は少なめという傾向が見られます。ただし南区は例外で、65歳未満では多めなのに対し、65歳以上では少なめに転じています。南区は札幌市の中で群を抜いて面積が広く、総務省の統計によると、人が住んでいる可住地は区全体の面積の2割に満たず、残りは山や森林が占めているとのことです。そのぶん、住宅や商業施設が点在しているような場所が多いことが想定されます。車の利用頻度が減ると外出そのものが難しくなりやすいのかもしれません。区ごとの傾向は、特定の年代だけの話ではなく、幅広い年代に共通するところが大きいようですが、南区のように地形によって年代ごとの事情が違う区もありそうです。都心から少し離れた区にお住まいの方も、買い物や用事のときにいつもより少し先まで歩いてみる、ちょっと離れたところの駐車場に停めるといった小さな工夫の積み重ねが必要になるかもしれません。
年齢を重ねると歩数は減るが、個人差は大きい
年齢が上がるにつれて、平均的な歩数は少しずつ減っていきます。40代では一日平均6,300歩ほどですが、70代では4,900歩ほどになります。
図5 世代別の平均歩数
ただし、これはあくまで平均の話です。実際には同じ年代の中でも歩数には大きな幅があり、80代でも6,000歩以上歩いている方は珍しくありません。年齢だけで「もう歩けない」と決めつけるのではなく、日々の習慣として続けることが何より大切だとデータからも感じられます。
毎週日曜日の夕方に、今週を振り返ってみませんか
歩数はスマートフォン本体に毎日記録されていますが、それをアルカサルのアプリに取り込むには、アプリを開く必要があります。そこでおすすめしたいのが、毎週日曜日の夕方に少しだけアプリを開いて、その週の生活と歩数を振り返る習慣です。今週はよく歩けた、来週はもう少し歩いてみよう、という振り返りは、それ自体が習慣を続けるきっかけになります。
毎日開く必要はありません。日曜日の夕方に少し振り返ってみると、来週も歩いてみようという気持ちにつながるかと思います。
これからのデータでわかること
今回紹介したのは、4月から7月までの4か月間のデータです。まだ冬の札幌のデータは含まれていないため、雪が降る時期に歩数や外出の様子がどう変わるのかは、これから明らかになっていきます。区ごとの気象データとあわせて、寒さや積雪と歩数の関係についても、今後改めて紹介できればと思います。
今回のデータについて
この記事は、アルカサルに参加している方のうち、実際に歩数の記録が確認できた方のデータをもとにしています。明らかに不自然な記録は、ランキングの不正防止で使われているのと同じ基準であらかじめ除いてあります。区ごとの比較は10区の平均を比べたもので、区の中の細かい地域差までは見ていません。また、アルカサルに自主的に参加している方に限られたデータのため、札幌市民全体にそのまま当てはまるとは限らない点にご留意ください。
※詳細な分析によって、数値が変わり得ることをご容赦ください。