有識者によるお役立ちコラム
PROFILE
北海道大学
高野 伸栄名誉教授
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学歴
1983年3月北海道大学工学部土木工学科卒業
1983年4月建設省東北地方建設局道路計画第一課
1989年10月北海道大学工学部助手
1999年7月北海道大学大学院工学研究科助教授
2015年7月北海道大学大学院公共政策学連携研究部教授
2017年4月北海道大学大学院公共政策学連携研究部長(2年間)
2021年4月北海道大学大学院工学研究院教授
2026年3月同大定年退職
VOL. 6
「アルカサル」利用意向と
健康維持促進に関する調査から見え
てきたこと
調査のあらまし
2025年12月当時、社会資本計画学研研究室修士2年の野田悠太君が(注1)、修士論文の一環として、「アルカサル」の利用意向と健康維持に関するインターネット調査を実施しました。本稿では、その概要と主な結果について紹介します。
調査は、(株)クロスマーケティングのモニターを対象とし、札幌市在住で、自分の意思で外出が可能な40代以上の男女400人から回答を得ました(調査期間2025年12月中旬)。なお、対象者は「アルカサル」を実際には利用していないため、調査では、説明資料を提示した上で回答してもらいました。
注1:現職:株式会社リンク・アイ企画室(キャリアアドバイザー、キャリア支援)
スマホ利用実態とアルカサル利用意向
図1は、年齢別のスマホ利用時間を示したものです。これによると、年齢が高くなるほど「非所持」や「ほとんど使わない」と回答する割合が大きくなっています。しかし、80代でも7割以上が1日30分以上スマホを利用しており、2時間以上利用する人も2割程度存在しています。高齢者においてもスマホ利用はかなり普及していることがうかがえます。ただし、本調査はインターネットモニターを対象としているため、一般高齢者よりICT利用に積極的な層が多いと考えられるため、留意が必要です。
図1 年齢別スマホ利用時間
図2と3は「アルカサル」を利用して、「歩行を増やしたい」か、「交流を増やしたい」かという質問に対する回答を年齢別に示したものです。歩行を増やす目的での利用意向は70代・80代で高く、5割を超えていました。一方で、「交流を増やしたい」という目的での利用意向は、全世代で歩行目的より低く、4割以下にとどまりました。調査時点では、対象者は「アルカサル」を実際には利用していないので、今後継続的に実態を把握していく必要があると思います。
図2 「アルカサル」によって「歩行を増やしたい」人の割合
図3 「アルカサル」によって「交流を増やしたい」人の割合
利用意向(歩行を増やす目的)が高い人の特徴
歩行を増やす目的で「アルカサル」を利用したいと考える人の特徴について、数量化Ⅱ類という手法を用いて分析しました。その結果、利用意向が高い人には、①スマートフォンを日常的に利用している、②外出行動が活発で社会的つながりを多く持っている、③健康意識が高い、という特徴がみられました。つまり現状では、すでにICTに慣れ、健康づくりに関心を持っている人ほど、「アルカサル」への関心も高いという傾向が確認されました。
一方で、利用意向は全体として約5割にとどまっており、今後さらに普及を進めるにはいくつかの課題も見えてきました。第一に、ICT利用に対する心理的・技術的な壁を下げることが必要です。スマホ操作への不安や苦手意識を軽減する支援が重要です。第二に、日常的な外出や歩行を自然に習慣化できる仕組みづくりが求められます。単にアプリを提供するだけでなく、「外へ出たくなる」きっかけづくりが必要です。第三に、「アルカサル」を単なる歩数計アプリではなく、健診結果の確認や健康行動の管理を支援する「セルフケア・デバイス」として位置づけることが重要と思われます。
ICT利用が他の要因に及ぼす影響
図4 共分散構造分析による要因相互影響図
図4は、共分散構造分析という方法を使って、健康意識と色々な要因との関係を分析した結果です。□で囲まれた1~15の要因は、今回の調査で得られたデータを示しています。各要因に○で囲まれたe1~s15から矢印が入っていますが、これは各要因が誤差(Error)を持っていることを示します。楕円で囲まれた4つの要因は、潜在変数と呼ばれるもので、15の要因に影響を与える変数を仮定して、設定したものです。例えば、「ICT利用」は「情報収集」、「利用自信」、「つながり」という調査データによって説明され、「地域」や「健康意識」に影響を与えるということがわかります。なお、矢印に示されている数字は、数字が大きい程、影響度合いが大きいということを表します。また、*の数は統計的有意性を示しています。
これによると、「アルカサル」利用を表す「ICT利用」は、他の要因に大きな影響を与える重要な起点となっていることが示されました。「地域」に対して0.677と最も大きく、ICT利用が、地域コミュニティにおける居場所の確保や対人関係の構築に大きな影響を与えていることが示されました。「健康意識」に対しても 0.347の影響が確認され、ICT利用が、健康管理に対する主体性を高める役割を果たしていることが示唆されました。
以上から、「アルカサル」は、「地域とのつながり」を強化して外出行動を促す影響と、「健康意識」を高めて、行動変容を促す役割の双方を持っていると考えられます。この結果は、「アルカサル」が、単なる計測ツールとしての機能に留まらず、健康意識をより高め、人と地域をつなぐ新たな社会基盤としての重要性を示しているといえるでしょう。