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有識者によるお役立ちコラム

PROFILE

大西浩文 顔写真

札幌医科大学 医学部
社会医学講座 公衆衛生学分野

大西浩文教授

  • 学歴

    H8年札幌医科大学医学部卒業
    H8年~H14年札幌医科大学医学部内科学第二講座、旭川赤十字病院、
    社会事業協会帯広病院、道立江差病院等で循環器内科医として勤務
    H14年~H16年内科学第二講座 兼 附属情報センター兼務、助教
    H16年~H17年米国シカゴ ノースウェスタン大学予防医学講座 客員研究員
    H17年~H18年内科学第二講座 兼 附属情報センター兼務、助手
    H18年~H19年公衆衛生学講座 兼 内科学第二講座、助手
    H19年~H23年公衆衛生学講座 兼 内科学第二講座、講師
    H24年~H25年公衆衛生学講座 兼 内科学第二講座、准教授
    H25年~H28年公衆衛生学講座 兼 循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座、准教授
    H29年~R6年公衆衛生学講座 兼 循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座、教授
    R7年~社会医学講座公衆衛生学分野 兼 内科学講座循環病態内科学分野、教授


    現在の専門分野

    疫学・公衆衛生、循環器内科、代謝内分泌内科

    研究テーマ

    循環器疾患の危険因子の解明、介護予防の要因の解明など

VOL. 5

「歩く」と「つながる」で
延ばす健康寿命

新緑の公園を散歩する日本人のミドルの夫婦

札幌市の未来を考えるとき、私たち一人ひとりが「いかに長く、元気に自分らしく暮らせるか」という問いは、避けて通れない大切なテーマです。そのために、私たちが今取り組むことのできる「歩くこと」と「人とつながること」の重要性と、札幌健康アプリ「アルカサル」の活用について見ていきたいと思います。

「健康寿命」とは何でしょうか

日本人の平均寿命と健康寿命の差

まず、私たちが目指す「健康」とはどのような状態を指すのでしょうか。WHO(世界保健機関)の憲章によれば、健康とは単に病気や虚弱がない状態ではなく、「肉体的、精神的、および社会的に完全に良好な状態」と定義されています。この「肉体的・精神的・社会的」という3つの視点は、「健康寿命」を考える上で非常に重要です。健康寿命とは「健康状態によって日常生活に制限のない期間」のことであり、身体的にも精神的にも社会的にも制限を受けない期間を意味します。

現在、日本人の平均寿命と健康寿命の差は、男性で約9年、女性で約12年です。つまり、人生最後の約10年間は、何らかの介護などが必要な状況にあることを意味しています。上図のとおり、札幌市の健康寿命は政令指定都市の中でも下位に位置しています。この「日常生活に制限のある期間」をいかに短縮し、健康寿命を平均寿命に近づけていくかが、私たちにとって重要な課題です。

「歩くこと」と健康との関係

運動をするシニア

2022年の国民生活基礎調査の結果によると、健康寿命を縮める原因でもある「介護が必要となった主な原因」の内訳では、認知症(16.6%)、脳血管疾患(16.1%)、骨折・転倒(13.9%)、高齢による衰弱(13.2%)などが上位にきています。健康寿命を延ばすためには、これらの疾病を予防することが重要となり、そのためにまず私たちが今日から始められることの一つが「身体活動」、中でも「歩くこと」です。

日本人の65歳以上の約4,000人を3.5年間追跡して1日あたりの歩数と死亡リスクとの関連をみた研究成果によると、1日あたりの歩数が5,000歩くらいまでは、1,000歩増加あたり死亡リスクが23%低下し、5,000歩を超えるあたりからは歩数が増えても死亡リスクはほぼ横ばいとなることが示されています。厚生労働省から公表されている「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」によれば、高齢者の場合、1日約6,000歩以上(身体活動40分以上)、成人の場合は1日約8,000歩以上(身体活動60分以上)が、健康づくりの一つの目安とされています。

「アルカサル」には、「歩く」を記録・管理する機能があり、1日2,000歩達成すると1ポイント、3,000歩達成でさらに1ポイント、1日4,000歩達成でさらに1ポイントを獲得できます。1日の家事や仕事などの身体活動でおおよそ2,000歩相当と言われていますので、1日4,000歩を達成すれば、前述のガイドに示されている1日6,000歩が達成できるという考え方です。また、継続することが重要となるため、1日4,000歩を週4回達成するとさらに2ポイント加算され、週当たりの達成回数が増えていくとさらに加算される仕組みになっています。

日々の生活の中で「意識して一歩多く歩く」の小さな積み重ねが、健康寿命を延ばす確かな力になると考えられます。

孤立を防ぎ「つながり」を育む

病院・デイサービスでボール体操・運動・リハビリするシニア・高齢者の男女と理学療法士・運動指導員

次に注目したいのが「社会的」な健康、すなわち「人とのつながり」です。実は、他者との交流頻度が低いことは、深刻な健康リスクにつながります。人との交流が週1回未満になると健康リスクが高まり、月1回未満では毎日頻繁に交流する人と比べて早期死亡のリスクが1.3倍、認知症リスクが1.5倍、要介護状態のリスクが1.4倍であるというエビデンスがあります。

また興味深いのは、「運動」と「つながり」を組み合わせた際の効果です。ある研究では、スポーツのグループに参加して週1回以上運動している人と比べて、一人で運動をしている人では、要介護リスクが1.65倍高いことがわかっています。驚くべきことに、グループに参加さえしていれば、実際の運動が週1回未満であっても、一人で運動している人より要介護リスクが低いという傾向も見られています。また別な研究結果では、地域住民が交流する「通いの場」に参加している人は、参加していない人に比べて5年後の要介護認定率が約半分(14%に対し7.7%)になるという報告もあります。つまり、健康のためには、「誰かと一緒に楽しみながら活動する」ことが、精神的にも社会的にも大きなプラスとなると考えられます。

「アルカサル」では、「人と会う」という機能もあり、対象活動・イベントに参加することにより、ポイントを獲得できます。また、協賛企業による来店ポイントなどもあり、買い物でお出かけすることでポイントもたまります。「歩く」についても、ランキング機能でご家族やお友達とグループを作って楽しみながら競い合うこともできますし、ウォークチャレンジで、お勧めコースを一緒に歩くのも一つかと思います。

若い頃からの積み重ねが未来をつくる

こうした健康づくりは、高齢期になってから始めればよいというものではありません。脳血管疾患などの原因となる高血圧や、認知症のリスク要因の多くは、若年期や中年期の生活習慣も大きく影響しています。実際、認知症の約40%は、若い頃~中年期~高齢期の対策によって予防可能であると言われています。

健康寿命の延伸には、乳幼児期から高齢期に至るまで、それぞれのライフステージに応じた「ライフコース・アプローチ」の視点が欠かせません。若い世代から、適切な身体活動を心がけ、地域や組織の中での良好な人間関係を築いておくことが、数十年後の自分自身の健康、そして札幌市の未来を守ることにつながると考えられます。

一歩踏み出し、手をつなごう

手をつなぐ シニア

健康寿命の延伸は、個人の努力だけでなく、社会全体で支え合う仕組みも重要です。札幌市の健康寿命を延伸するためには、誰もが自然に体を動かしたくなるような環境整備や、誰もが疎外感を感じることなくアクセスできるコミュニティの存在も不可欠です。札幌健康アプリ「アルカサル」はそうした環境整備の一環と考えることもできます。

私たち市民にできることは、まず一歩、外へ踏み出してみることです。近所の公園を歩く、階段を使ってみる、そして地域のサークルやイベントに顔を出してみる。その小さな一歩が、あなた自身の健康を守り、ひいては札幌という街をより活力あるものに変えていくはずです。「歩くこと」と「人とつながること」、この二つの大切な習慣を、「アルカサル」とともに、今日から始めてみませんか。