有識者によるお役立ちコラム
PROFILE
北海道大学
山本 強名誉教授
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略歴
1953年北海道生まれ。北海道大学工学部電子工学科卒業、同大学大学院工学研究科修士課程修了。富士通株式会社勤務を経て、北海道大学にて講師、助教授、教授を歴任。大型計算機センター、大学院工学研究科を経て、大学院情報科学研究科教授として教育・研究に従事した。情報基盤センター長、産学連携本部副本部長などを務め、大学の研究基盤整備および産学連携の推進に尽力。2018年定年退職、北海道大学名誉教授。
専門はコンピュータグラフィックス、画像・映像処理、情報ネットワーク、医用画像処理など情報工学分野。工学博士。
注: この略歴は ChatGPT5.2により生成し、著者が内容確認したものです。
VOL. 4
デジタルツールで健康と遊びをいつまでも
60年前からは想像もつかない今、遊びながら健康を
私が小学生だったのは1960年代で、当時の雑誌に描かれていた未来の代名詞は21世紀のことでした。そこに描かれていたのは車輪のない自動車が透明なチューブの中を飛んでいて、月への定期便があるような未来社会のイメージだったのを覚えています。
それから60年経ち、私も72歳で高齢者の仲間入りです。その私が今生きている2026年は昔描かれていた未来とはだいぶ違っています。確かに科学技術は進化したのだが、自動車は相変わらず車輪で走っているし、飛行機や船も形が変わってない。大きく変わったのは情報の伝え方、使い方なのです。
当時の最先端の情報機器は電話と大型コンピュータで、それも進化することは考えていたのだが、まさかスーパーコンピュータとインターネットが合体したスマホを誰でも持っている時代が来ると予想していた人はいなかったでしょう。
そんな21世紀を生きる高齢者の最大の関心事は健康、それもただ長生きするではなくて、楽しく遊ぶかです。今が健康ならそれをいつまで続けられるか、そうでないなら衰えた機能をどう補うかを考えなきゃなりません。それも健康であるために苦労するのではなく、楽しく遊んだ結果そうなっていたという風になりたいものです。
登山アプリを使って楽しく情報収集し登山計画まで
私は現役時代から仕事として高齢化社会でのITの活用も研究として取り組んできました。ただ、現役時代の私は高齢者ではなくIT側の視点で「お世話する」という立場での活動だったのです。気が付いたらその私が「お世話される」立場です。そうなって改めて何が楽しいか、どういう高齢者になりたいかということが見えてきたという感じがしています。
私は65歳過ぎてから友人に誘われて登山するようになりました。きっかけはコロナ禍で、人が密集しない遊びという理屈でした。そこで最初に進められたのがスマホの登山アプリ(YAMAP)でした。登山は紙の地図を持って行くものと思っていたら、今は登山ルートから現在位置、さらには行動履歴までスマホが管理してくれるのです。登山愛好家向けのSNSもアプリに含まれているので、直近で登った人が山の情報を公開していたりします。山に入る前から登山は始まります。自分と似た年代の高齢者がどのくらいの時間で登ったかもわかってきます。そんな情報を参考にして登山計画を作るのは楽しいものです。もちろん、体力自慢の若者の超人的な登山記録も見えるのですが、それと競争する必要はありません。自分と同年代の登山者のデータを参考にすればいいのです。体力が衰えた高齢者こそ情報ツールを活用して登山を楽しみたいものです。
参考まで、私が2022年9月に羊蹄山京極コースを上ったときのデジタル記録を引っ張り出してみました。
この時点で私は68歳で、当時は標高差1500m以上を10時間弱で往復していたことが記録されていました。こういう記録は、いつか孫が大きくなって登山するようになった時、お爺ちゃんは昔このくらいで登っていたと自慢をするためにも使えます。
図1. 2022年9月の羊蹄山登山のYAMAPのデジタル記録
いかに面白く遊びとできるか
夏は山歩きでそれなりに運動している感はあるのですが、冬は山にも行けません。そんな折、職場の同僚から頼まれたのが札幌圏スマートアプリのSAPPOROウォークチャレンジの企業等グループ対抗ウォーキング企画への参加でした。当時、それに関係した会議のメンバーだったこともあり、これはやらねばとすぐ登録して、自分の歩数を毎日記録し始めました。
この企画が面白いのは、自分の歩数の月間集計を性別、年代別、グループ別などいろんな部門でランキングするので、頑張るとどこかの部門でそれなりの順位になります。私は当時70歳だったので70歳台部門ならもしかすると1位になれるのではないかと思い立ち、当時は地下歩行空間を最大限活用して遠回りルートで職場へ歩いて通ったものです。その結果、ある時点でその部門で1位になったので記念のスクリーンショットを取りました。そのまま逃げ切れるかと思った次の日に突然私の倍以上歩いた人が現れて私の夢は無残にも砕かれたのです。1日でそんな歩数が出るのかと疑問を感じたのだが、きっとその月に誕生日を迎えて70歳台になった人が新規参入したのでしょう。
このチャレンジで感じたことは、歩くことの動機付けとしてのデジタルツールの使い方です。ただ一日の歩数目標をこなすのではなく、いかに面白く遊びとして歩くかです。
私がトライしたのは狸小路から札幌駅北口までのチカホ空間を同じ道を通らずに歩ける最大距離を探るというゲームでした。普通、スマホのアプリは最短距離を探すのですが、逆に同じ通路を通らないで最大何キロ歩けるかという経路探索を自分でしてみたわけです。今は新幹線工事の関係で通路が少なくなって楽しみが減りましたが、当時はチカホの中だけで相当に長い距離を歩けました。そうやっていると、普段の通勤経路では見えないお店や行事が見えてきてだんだん楽しくなってきます。
図2. 2024年2月のSAPPOROウォークチャレンジスクリーンショット。「つよぽん」が私の登録名
人生のいろいろな楽しみ方を知っている人とつながって
私は専門がITなので特別だと思われがちですが、ここで紹介した例はIT分野の専門家ではない友人から教えてもらったり、誘われたりしたものです。その人が実際に使ってよかった、楽しかったからこそ私に紹介してくれたのです。
技術を教えるのは専門家の方が良いのでしょう。でも楽しいを教えるのなら、それを楽しんだ人や遊んでいる人が一番です。人生のいろんな楽しみ方を知っている友達がいて、みんなが情報ツールでつながっている、次の未来はそういう社会になってほしいですね。